十九話・『クズ』と『クズ』はいずれ引かれ合う。
1998年に私は横浜の会社を去る決意をする。
店長(仮名リトルと呼ばしてもらう)は2代目で三兄弟で各店舗を持っているボンボンである。私より5歳年上なのだが、家は新築で車はベンツのワゴン。
リトルは仕事中に抜け出してはパチンコに行く程のクズである。
ある日、仕事中の夕方16時頃にリトルから電話があり、電話近くにいたスタッフが電話を取ると『ちょっと至急、クロちゃんに代わって大事な件なんで』との事。
何事かと私が電話を取り話を聴いてみると…
『何ですか?仕事で忙しいんですが』
リトルの声が聞き取りづらいが咄嗟に分かる、野郎パチンコ屋にいるな…
リトル
『タクシー代は払うから今すぐに平楽までカッ飛んで来てくれないか?』
※平楽とはグループ系のパチンコ屋であるが…
ん?まさか…
小声で『まさか連チャンが止まらないから代打ちしろ?ですか』
リトル
『正解、クロちゃんにも1箱上げるから、ちょっと緊急の用事が入ってさ、急げ!』
仕事中にパチンコ屋にタクシーで駆けつける、現実的にありえない事である。
が私は即、実行した。
私は下心も欲にまみれている程のクズであるために速攻で隣駅にあるカスみたいな店の平楽にタクシーで駆けつけた。
平楽の狭い店内に入り、リトルを探すと、イベントコーナーのカド台でブッコ抜きしているのが一目瞭然で分かった。
※当時のイベントコーナーは台の上に目立つような札が刺さっているのである。
『連チャンが止まらないんだよ、釘も開いてるし、これ閉店まで勝負でしょ、クロちゃん、ちょっとこのストロークを維持して、ハンドル固定してるから打っててね』
※ハンドル固定とは1円玉で位置を固定するのである。
私が代打ちした台は当時、どこの店にもあった人気台『モンスターハウス』である。
既に9箱は出ていたが、まだまだ出る雰囲気で私も代打ち代金を上乗せするためガチで打った。
モンスターハウスは竹屋にしては完成された台であり、ツルツル滑りや突発的なゾンビの手が突然出たりする、アツイ台なのである。
リトルが2時間後に戻ってくると私は21連チャンのプレミアム画像まで拝んでいたのであった。(自分の金では12連が最高である)
『クロちゃん、やったじゃん!ありがとうね、お礼に五箱上げるよ、持っていって』
その日は閉店の23時まで2人で打ち、リトルが八万程勝ち、私は2万程の勝ちで終えた。
気分揚々のリトルはそのまま私とキャバクラ街に消えたのは言うまでもない。
その後、休日になるとパチスロ、パチンコを打ちまくり、またもやパチスロの乱れ打ち、未練打ちによって、負けに負けてついに借金の自転車操業状態に突入する寸前まできていた。
そしてリトルは自分の子供が生まれたばかりでも、相変わらず仕事が終われば毎日のように飲み歩いたり、パチンコに行ったり贅沢の限りを尽くすクズでもあった。
私の財政は困窮を極めていた(給料23万から返済だけで6万、社会保険も入ってないため手取りから払ってた)
ある日、リトルに給料の相談をしてみた。
ボンボンのリトルは『分かった、親父と相談してみる』
※実質的な金の出資者は会長であるリトルの親父である。会長も癖者だったので私は会長と言った事は無く、常にジジイと呼んでいた。
ふと、リトルが親父から貰ってる給料の額が気になり、聞いてみた。
すると、さらりと
『60万だよ、うちの親父もセコイからなぁ』
私の何かがブチっとキレた。
俺の、三倍かよ…
なるほどね、関内のキャバ嬢を愛人にしてる訳だ…
そして次の就職先を探し始めるのであった(手取り30万以上を探さないと150万に膨れ上がった借金返済が不可能になるため)
※退社してからもリトルとは付き合いがあり、たまに吞みに行ったりするのだが、リトルの吞み仲間にタレントの『北乃きい』ちゃんの親父もいたのは事実である。
実際に横浜の関内で一緒に呑んだ事もあるが、その時に私の時計が背伸びして購入した25000円のニクソンでリトルや北乃の親父の時計は高額だった記憶だけはある。
(背伸びしながらの会話ほど不味い酒は無いよ)
ジョジョの第4部・間田の台詞に『スタンド使いはスタンド使いと、いずれひかれ合う』と言う格言があるが
当時の場合はクズがクズと引かれ合う、引力の法則があったと思う。
『竹屋・モンスターハウス』
4種類のセル画があり保留玉消化時に発生する連続予告音(ツルツルアクション)が確率変動大当たりへの期待度を高めた。
大当たり21連荘で「大爆発中」と表示されるプレミア画面があったりリーチ開始後の1周目に地中から突然ゾンビの手が出て大当たりするプレミア演出がある。
借入件数3件
借入額150万
毎月の支払い6万
車のローンも有り(75万)