博打との死闘

博打のヒリつきに狂い借金を重ねていく実話

十二話・社長の逃走劇

社会人四年目の12月

 

最も忙しい時季だが、私も含め社員達は必死に働いた。

 

毎年、夏と冬には金額は少ないがボーナスが出るのである。

 

当時の給料は入社してから四年で毎月の給料14万から16万に上がったが話にならない金額である。

返済が毎月四万、ギリギリな生活のため食費をかなり削っていた。

 

朝は食パンにマヨネーズをかけたり、同部屋である先輩の仕送りのみかん箱から少し分けてもらったりもしていた。

 

昼は350円の食券を使いレトルトしか出さないおばさん食堂で毎日、カレーか鯖煮の2択。

(食券はテナント割引で1ヶ月分を安く買えるため、給料が支給されるとすぐに購入していた)

 

夜は寮費によって皆んなで自炊のため、何とかなった。

 

 

身長178で体重が53キロ、完全に頬はこけていてまるで力石徹の減量状態と変わらないのである。

 

そんな過酷な状況でも暮れのボーナスが唯一の楽しみであった。

 

『嗚呼、このボーナスで多少の復活は出来る、まずは焼肉でも食べるか』

 

などと空想を練っていた。

 

しかし…

ボーナスの支給日、下っ端にボーナスが入っているかを確認させに行かせる。

『まだ、入ってませんね😰』

社員はざわつく

 

じゃ明日かな…

 

翌日も振り込まれてない…

 

先輩がブチギレて社長に電話をするが繋がらない…

 

店長『野郎、身を隠しやがったな💢全員で手当たり次第に野郎の場所を突き止めるぞ!』

 

私は青ざめた、ボーナスの支給日を頼りに全財産をたぬ吉で勝負し、無残にも敗北を喫し、財布には500円しかない状況であった。

 

私は全力で野郎(社長)を探したがみつからないまま一週間が過ぎた頃である。

 

社長の飲み仲間が、ある物を紙袋に入れ持ってきた。中身を皆で見てみると…

 

なんと!片方だけの靴が入っていた…

 

社長の友人

『何だか、彼は機嫌良く飲んでたよ、酔い過ぎて片方の靴を忘れていったみたいだね、ははは(笑)』

 

皆、顔面蒼白である。それ以上に私は絶望感と怒りがMAXに到達していた。

 

『ダメだこりゃ、もはや最終手段しか無い』

と決意する以外の道は無かった…

 

 

私の財政が完全に終わったため、休日の朝一に消費者金融に始めて入った。その名は…

『サンクス』

ついに3枚目のカードに…

 

実は大手の消費者金融には抵抗があり、まだ手が出せなかったのである(会社に在籍確認の電話が入るのを恐れたため)

 

審査が通るかは微妙だったが、1時間後には何とか20万程の借入に成功したのである。

 

『とりあえず、助かったか…

社長が帰って来るまでは大事に使わなければならない金だな』

 

私はそのまま南武線に乗り、帰宅しようとしたがまだ10時半である事に気づいた。

 

『ある意味、これは軍資金だな。溝の口のキングなら綱取りのモーニングが取れるかも…』

 

パーラーキングは客が少なくモーニングを仕込む穴場的な店であった。

※モーニングとは店が意図的に当たりを仕込んでいるのである。

 

キングに到着するとまだ『綱取り物語』は荒らされていない状況であった。

 

借りた金だが、綱取りをカニ歩きしヒットする台を探した。

 

二台目でモーニングを拾ってしまった。

そして数珠連こそが綱取りの醍醐味であった。

 

私は運良く、五連ほどしモードが変わる前に即止めし帰宅するのである。

 

帰宅すると、何故か社長が犬の散歩に出るところを発見してしまった!

※寮の隣は社長宅であった。

 

『社長ょょょょう💢‼️どこにズラかってたんすか、私も含め、みんな激怒してますよ💢』

 

社長

『ああ、賞与ね、あれ今回から廃止するわ、不景気だからな、ははは(笑)』

 

私は信じられない言葉を聞き、寮に入り、心を沈めていたが、ジワジワと怒りが込み上がってきた。

 

渾身の力で壁にグーパンして、穴を開けてしまった…

(ダービー馬のウイニングチケットのポスターで穴を隠した)

 

『もう限界だ、去るしか無いな』

 

これがきっかけで、私は5年目の春に会社を退社したのであった。

 

※綱取り物語とは、モーニングを仕込む事の出来る台であり強烈な連チャンを売りにしていたが、実は3種類のモードを搭載していた。

天国(6分の3)→37分の1

通常(6分の2)→247分の1(これがメーカー発表値)

地獄(6分の1)→998分の1

実に恐怖の台であったのだ。

 

借入件数3件

借入額50万

毎月の支払い額5万

 


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