十三話・韓国ソウルでの惨劇。
この出来事は社会人5年目に突入する前の2月に起こった惨劇である。
1月の元旦、寮の連中が帰省するために寮には私以外は誰もいなかった。
青森や福井など遠くから来ているために休みを長めに取るので、私が代わりに彼らの分まで15日間休まずに働いた。
休みを代わった分だけ私にも長期連休を2月に取らせてもらう事にした。
問題は正月の三が日はあからさまに出ないのは分かっていた。5日の金杯で勝負する手段であったが…
悲しい事に正月をパチスロで勝負していた自分がいた。
無論、朝一からであるが、正月は13時間も営業している店は少ないので気をつけるのは必須である。
私が3日間打ち倒した台は…
※小役回収打法とリプレイハズシによる技術介入で、設定1でも103%の機械割になり、そのため、クランキーコンドルの登場でスロットで生活するスロプロも誕生したと言われていた。
私もそれを信じて溝の口の『こがね会館』をターゲットにし、勝負した。
元旦、マイナス3万…
『まぁ、元旦は仕方ないよ、帰ってクラコンの予習でもするか』
2日目 マイナス2万…
『ふざけんなよ、何がベタピンでも勝てるだよ!完全に明日こそ取り返したる!』
最終日 マイナス5万…
この日はATMに三往復していた。
『もうダメだ…、通帳には2万しかねーよ😢
後20日間はどうしよう…』
私はさらに一万を下ろしてハネ物『たぬ吉君2』で少し勝負するが話にならない釘であるので諦めた。(ヘソに玉が挟まる程のシメシメルックであった)
少し歩くと溝の口の駅前に『ダルニー食堂』がある。ダルニーに寄り、ピータンをつまみにビールを飲みながら何も考えない事にした…
※中華系だが味は悪くなかった。
悪夢の三が日が過ぎた休日の私はお金が無い。ビデオも借りれない。仕方なく図書館に行く事にした。暫くは通い詰めていた。
そこで出会った本こそが私の人生の一部を変えた本でもある。
無我夢中で読み、完全に感化されてしまい、急に異国への旅がしたくなった。
※パチンコ屋が無い国の意味も含め
2月に1人で韓国にバックパッカーとして行く決断をするのであった。
翌日、店長と話した。
『少し旅をしたくて、来週の連休を3日間下さい、自分探しの旅に出ます』
承諾をされたが、皆が私にお土産を買ってこいと催促をしてくる。
『面倒くせーなぁ』と心に思ったが全てを引き受けた。
金は無いが、3社からまだ借入出来る、10万程の借入をし、格安航空券で出発した。
韓国に到着し、観光などをしながら楽しんでいたが、翌日に惨劇が起こった。
韓国2日目、ソウルの喧騒とした街を徘徊していると男が私に近づき話しかけてくる。
『私は新宿に5年ほど住んでいたので日本語は分かりますよ、良かったら一緒に飲みませんか?』
見た感じだと40代の中肉中背で、髪はスポ刈の笑福亭笑瓶みたいなおっさんである。
色々と話をしながら笑瓶の案内された店に入る。
中は異様な空間であった、90年代の韓国は発展途上国であり急激に成長するのだが…
私
『なんだよ、この店はボッタクリ店だろ?俺みたいな若造は金なんかねーよ』
笑瓶
『大丈夫だよ、俺を信じてよ。ここのママさんは俺の親戚だから大丈夫、安く飲ませるよ』
日本語が話せる笑瓶に気を許してしまった私は2時間以上は話していた。
笑瓶がトイレに行くと言った後に若い女の子が私の隣に座りまた三人もの女の子達が私のテーブルに座り始めて勝手に語り始めた(韓国後で)
私はいささか不安になりトイレに行くと言った後に狭い店内で笑瓶を探したがいない…
その時に全身から血の気が引いた…
『しまった、嵌められたわ、これはヤバイ、絶対にヤバイ…とにかく2万だけ財布に入れて後は靴の中に隠そう』
トイレから出て店内の様子を眺める、ヤクザっぽい奴がいないかと…
顔面蒼白でテーブルに着き、即ママさんに会計を頼む
ママさんが紙に書いた金額を提示する
そっと金額を見た瞬間に目眩がした…
『日本円で16万…』
だが、段々と私のアドレナリンが上昇してきた。ボッタ店にムカつき始めた。
『ふざけんな!なんだよこの金額は、俺は女の子も呼んでねーし勝手に座ったんだろう!』
『俺と一緒にきたお前さんの甥っ子の笑瓶を連れてこい!
かなりの怒鳴り声で店内は静まった。
すると笑瓶がのこのこと奥から出て来た。
私はすかさず笑瓶の前に行き、怒鳴った。
『コノヤロー、騙しやがったな』
笑瓶が豹変した
『あっ、お前が勝手について来たんだろうが、金を払えよ!』
ここからはアウトレイジの世界である。
『なめてんじゃねーぞ、コノヤロー!払える金額かコラ!』
もう引き下がれない、行くとこまで行く覚悟を決めた。
笑瓶
『てめー都合の良い事、語ってんじゃねーぞ!
散々飲み食いして食い逃げか?コラ、大概にせーよ』
私
『はぁ?てめーが勝手にウィスキーのボトル頼んだんだろうが、俺はビールしか頼んでねーんだよ!勘定して笑瓶が払うのが筋だろーが!』
私は財布から2万をテーブルに置き、
『俺、帰るわ、これ以上は金がねーし、すげー不愉快だわ』とママさんに告げる。
すると、ママさんが『足りないけど、帰っていいよ、帰りは笑瓶に送らせるから』
笑瓶は急に笑顔になり私を出口に招きホテルまで送ってくれたのである。
極感の道中で笑瓶が
『悪かったね、韓国は危ないから本当に気をつけてね』
『ああ、気をつけるけどお前さん、もう日本人をカモにするのはやめとけよ』
笑瓶は黙ったままであった…
ホテルに着き部屋に戻ると、疲れからか、シャワーも浴びずに朝まで泥のごとく寝てしまった…
起きると10時を過ぎていた、その日は16時の便で帰国する予定だったが、私は何処にも寄る気が起きず、そのまま空港に向かい帰国した。
(お土産のリクエストは完全に無視をして南大門市場で購入した唐辛子だけであった)
今、振り返ってもあの騒動に起こった、自分の行動が未だに信じられない。深くは考えたくないが理不尽な国でのあのやり取りは非常に危なかったと痛感するのである。
しかしまた借金が増えてしまうとは…
とほほ…
借入件数3件
借入額50万
毎月の支払い4万